日本での現実的で完全な無農薬栽培とは?② ― 2007年01月29日 22時13分23秒

前回は農薬を使用しない場合の減収率の試験結果を紹介しました。でも、「江戸時代はどうだったんだ?」とか「スーパーで無農薬栽培の製品を売っているじゃないか?」と疑問に思うかもしれませんので、概略を説明したいと思います。
「江戸時代はどうだったんだ?」
→→→ 種類や品種にもよりますが、昔に比べて品種改良が進み、味、大きさや収穫量などの向上と引き替えに病害虫に弱くなっている作物もあります。また、年貢に充てられる水稲などを除けば、今よりも自家消費傾向が強かったので、生産性はあまり要求されなかったでしょう。でも、冷夏や長雨などで自然条件が変動した時には、病害虫が大発生して、江戸時代の飢饉のように餓死者も出ています。
享保の飢饉(1732年)では、長雨と冷夏、イナゴとウンカの大発生により、西日本46藩総石高236万石に対して、この年の収穫は約63万石(27%)しかなく、餓死者百万人弱と記録されています。天明の飢饉(1782~87年)は冷害、多雨により、東北地方を中心に全国で約2万人が餓死したと推定されています。天保の飢饉(1833~39年)では、多雨、冷害により、秋田藩では人口約40万人のうち死者が10万人出たとの説もあります。
「スーパーで無農薬栽培の製品を売っているじゃないか?」
→→→ 栽培する作物の種類にもよりますが、一般的にヨーロッパ、オーストラリアやアメリカなどの栽培地は日本に比べて、降水量の少ない乾燥傾向であったり、植物の育ちにくい土壌などのため、雑草が少なく、病害虫の発生しにくい環境です。しかしながら、外国産の無農薬栽培された生鮮品が販売されていることは少ないと思います。いくら病害虫が少なくても0(ゼロ)ではないので、どうしても病害虫の影響で外観や食味の良くないものも含まれます。そのため、(保存性の観点もあると思いますが)ソースやジャムなどに加工するものが中心になると思われます。日本にもヨーロッパのような無農薬栽培しやすい地域が、ごく僅かにあるということを聞いたことがあります。