日本での現実的で完全な無農薬栽培とは?①2007年01月23日 23時20分06秒

農薬を使用しない場合の減収率

 色々な問題が多発することもあり、農作物の無農薬栽培が望まれてきているように思われます。そこで、「日本での現実的で完全な無農薬栽培とは?」というテーマで、幾度かに分けて問題を提起をしてみたいと思います。
 あえて、「完全な」と記した意味は似非の無農薬栽培があるからです。例えば、強い農薬を散布した後の畑に、種をまき、育てて、収穫する。このように”栽培中は無農薬”でも”無農薬”とだけ言われていた場合があるためです。
 ちなみに、私自信は無農薬絶対主義者でもなく、「農薬は少なければ少ない方がいい」と思っています。

 現在、病害虫や雑草などによる農作物の損失率は、アジアで43.3%、オセアニアで27.9%、世界平均で33.8%と言われています。まず今回は、”現在”の”日本”の”慣行栽培方法”における農薬使用有無でどのぐらい収穫量が変わるかを調べた試験を紹介します。

 1991~1992年に社団法人日本植物防疫協会が中心となって、試験場や農業大学校などで農薬の使用有無による作物の収穫量を調べた1)。慣行的な農薬を使う「防除区」に対する農薬を使わない「無農薬区」の減収率を図に示した。減収率とは収穫量の減少する割合、例えば100%の場合、「無農薬区」の収穫量は「防除区」の0%である。また、表には減収率と出荷金額の数値データを示した。
 品種により程度は異なるが、この試験の結果ではどの作物も収穫量が減り、さらに品質が下がるため出荷金額はさらに減少する結果であった。
 また、除草のみに絞り込んで「手取り除草区」と「無除草区」を比べると、水稲の場合約30%、大麦約70%の減収率になったとのこと。

農薬を使用しないで栽培した場合の病害虫などによる作物別の収量と出荷金額の減少率(%)
  収量  出荷金額
  最小値  最大値  平均値  最小値  最大値  平均値
水稲(10)  0 100 28 5 100 34
小麦(4)  18 56 36 18 93 66
大豆(8)  7 49 30 7 63 34
とうもろこし(1)      28     28
ばれいしょ(2)  19 44 31 19 64 42
キャベツ(10)  30 100 63 30 100 64
だいこん(5)  4 76 24 21 80 37
きゅうり(5)  4 88 61 4 86 60
トマト(6)  14 93 39 13 92 40
なす(1)      21     22
りんご(6)  90 100 97 98 100 99
もも(1)      100     100
(注1)()内は調査箇所数
(注2)減少率は防除区との比較

Ref. 1)日本植物防疫協会、農薬を使用しないで栽培した場合の病害虫等の被害に関する調査報告(1993)